【サウナ】南町田 東京・湯河原温泉 万葉の湯|

サウナ短歌
ひんやりと濡れ手をはなに寄せてみれば心づかひのカルキの香

カルキ臭が好きだという人はほとんどいないだろう。

見た目はパッとしないのに、なぜかモテモテのラブコメ主人公のような学生時代を送った人なら、もしかすると塩素の匂いを嗅ぐとモテ期に体験したプールでのあれやこれやを思い出すから好きだ!と言うかもしれないけれどそんな都合の良い人には出会ったことがない。

温浴施設の水風呂には塩素が入っている。もちろん衛生管理のためだ。
例外はあるものの、基本的には厚生省が定める「公衆浴場における衛生等管理要領等について」において浴槽水は塩素系薬剤を使用して消毒すると記載されている。
公衆浴場における衛生等管理要領等について(厚生労働省HP)

水風呂を語るとき、一般的にはカルキ臭さがないものが良いとされている。

カルキ臭さがない飲み水が美味しいように、カルキ臭さがない水風呂は肌あたりがまったく違う。例えば、サウナの聖地と呼ばれている静岡のサウナしきじは駿河の天然の湧き水を水風呂に使っているので、まるで上質な羽毛の肌掛けに包まれているような心地良さだ。

以前サウナしきじを訪れたときにこんなサウナ短歌を詠んだ。
白肌を滑りこませるシルク地の肌掛けにただ包まれており

全国のサウナ愛に溢れる温浴施設では、竹炭での濾過を試みたりとカルキ臭を抑えるために苦心している。
わたし自身もカルキ臭のしない水風呂が良い水風呂だと思ってきた。

ところが、そんな水風呂カルキ問題に対してニュートラルな気持ちになる出来事があった。

まるで温泉旅館みたいな温浴施設

東京・湯河原温泉 万葉の湯は、2019年に駅名を改称したばかりの南町田グランベリーパーク駅から徒歩10分の場所にある。

施設名のとおり、水道水を加熱したお湯ではなく正真正銘の湯河原温泉に入浴できるすばらしい温浴施設だ。
なんと、毎日湯河原からタンクローリーで温泉を運んでいる。

しかも東京ドームおよそ5個分の広大な敷地を誇るショッピングエリア南町田グランベリーパークが近くにあり、デートやショッピングの〆にお風呂に入りに行ける……というイキな導線が出来上がっている。

万葉の湯の中には食事処や、旅館さながらにごゆるりと宿泊できる個室があるので家に帰るのが面倒くさくなっても安心だ。
食事処のごはんは、正直に言うと「こんなもんかな」という感じだけれど、お風呂は良いところがたくさんあった。

まず、なんと言っても露天風呂が素晴らしい。露天スペースに人工の小川が流れていて風情を感じる。小上がりの外気浴スペースは自然の風に吹かれながら大の字に寝転がってととのえるので多くの人に体験してほしい。

サウナマットも良かった。
ふかふかのパイル生地のサウナマットは、おしりの下に敷いたときの感触が夢みごこちのやわらかさだ。スタッフさんが定期的に清潔なサウナマットをサウナ室の入り口に補充してくれるので、いつでもまっさらなサウナマットを使用できる。

他人の汗が浸みたサウナマットの上におしりを付けるなんて考えられない!という潔癖症の方にも自信を持ってお勧めできるサウナだ。
と言いつつ、わたしが全く潔癖症の気がないので、潔癖の基準を満たしていなかったらごめんなさい。

感染症対策の頼もしい味方 塩素

肝心の水風呂に入ると「あ〜気持ちい!」と声が出た。サウナが好きになればなるほど、水風呂が好きになる。サウナは水風呂の前戯と呼ばれるのも納得だ。

サウナーになる前は、水風呂なんて好きものの老人だけが入るものだと思っていた。
今は逆に、わたしが”好きもののオバサン”だと眺められているのだろう。

わたしがエスパーだったら、そんな彼らの脳に直接語りかけたい。「聞こえますか……水風呂にはいりなさい……水風呂にはいるのです」

それでもまだ水風呂に入らずにいる彼らにあえて言葉で水風呂の良さを伝えるならば……。

まず水風呂に入ると頭がスッキリする。クロレッツの100倍スッキリする。
それから眼球のにごりが消えて視界が澄んでくる。ネトラバスティの施術後のように世界の美しさに感動する。
さらに手足の指先まで血が巡り全身の疲労感がふっと軽くなる。

ネトラバスティ…
アーユルヴェーダの施術のひとつ。ギーと呼ばれる不純物を取り除いたバターで眼球を浸す。眼精疲労等に効果があると言われている。

わからずやの彼らのためにあえて言葉で説明したが、水風呂の良さを言葉で語るなんてナンセンスだ。Don’t explain. Feel…

あまりの気持ちよさに、手で水をすくって顔をバシャバシャやりたかったがマナー違反なので我慢した。

代わりに、水風呂から出た後にまだひんやりする手で顔をペチペチたたいた。化粧水をパッティングするように顔中にまんべんなく水をしみこませる。仕上げに両手で鼻から頬をおおってハンドプレスすると、すんと懐かしい匂いがした。カルキの匂いだ。

学校のプールの匂い。目を洗う特殊な形の蛇口から出る水の匂い。おしりを浸ける消毒槽の匂い。紺色のスクール水着に縫い付けられた大きなゼッケン。

毛深い体質だったわたしはプールの授業の前日には相当な時間をかけて処理に勤しんだ。プールさえなければ貴重な時間を勉強に当てられて東大に行っていたかもしれないし行っていないかもしれない。

ムダ毛は大人になってから大金を注ぎ込んで根絶やしにした。毛深くなかったら余裕で世界一周旅行に行けていた。

モテ期とは無縁の学生生活のせいでカルキの匂いはわたしには酸っぱすぎる。
でも感染症対策を意識するようになった今では、頼もしい香りに思えた。

ありがとう塩素。
来世は薄毛に産まれますように。

東京・湯河原温泉 万葉の湯