【旅エッセイ】屋久島|飛行機の欠航を祈る時(わたしとFの場合)

屋久島は暖かい海に囲まれていて、ちいさな島の中心には標高1,935mの高い山がそびえ立っている。その特殊な地形からひと月に35日雨が降ると言われるほど降水量が多い。

とはいえ雨で旅行が台無しになる可能性はまったく考えていなかった。わたしがギリギリ晴れ女だからだ。

快晴とまではいかないけれど旅行の時に雨が降ることはほとんどない。あやしい曇り空になっても、いつもなんとか持ちこたえてくれる。

ところが羽田空港のチェックインカウンターで思いがけない言葉を告げられた。

「本日は悪天候のため、鹿児島ー屋久島間のフライトが欠航になる可能性がございます」

東京から屋久島への行き方は2種類ある。

ひとつは飛行機で鹿児島空港まで飛び、港に移動して高速船で屋久島に上陸する方法。

もうひとつは鹿児島空港で飛行機を乗り継いで屋久島まで行く方法だ。

国際便ならトランジット先で欠航になることもあり得るが、まさか国内便で起こるとは思いもしなかった。しかも、東京は気持ちの良い秋晴れなのに。

眠くて半開きだった目がカッと開いた。が、その10秒後、わたしはある計画を思いついた。

屋久島は朝晴れていても天気が変わりやすい

欠航になったら鹿児島から熊本に行こう!と思い立った。

熊本には憧れのサウナ湯らっくすがある。宿泊ができるのでホテルの予約をする必要もない。

ついでに阿蘇山に行こう。子どもの頃に教科書でカルデラの写真を見てからずっと惹かれていた場所だ。

そしてなんといってもあの水戸岡鋭治さんがデザインした九州新幹線に乗れる!

なんてワクワクする旅だろう。

こんなに晴れているのに

友人Fが上下スウェットのような格好で空港のロビーにやってきた。鹿児島ー屋久島間のフライトが欠航になるかもしれないと告げるとFのむくんだ寝起きの顔に埋もれていた瞳がカッと開いた。

が、その数秒後にはゆっくりとまぶたが下がった。

鹿児島ー熊本間の乗り換え検索のスマホ画面を見せながら「熊本に行こう」と提案するとあくびのような了解の返事が返ってきた。

頼む、欠航になってくれ。

※このエッセイは2020年11月の旅行を回想して書いています。