【旅エッセイ】冬のウラジオストク 〜雪のにおいが分からない

※この記事は2018年12月の旅行を振り返っています。

ウラジオストク駅からモスクワまでは9,000Km以上ある。
ウラジオストク駅のホームにはモスクワまでの距離を標した標識が立てられている。標識のてっぺんにはロシアの国章である双頭の鷲のレリーフが飾られていて、いかにも厨二が好みそうな感じだ。
と言いつつ、わたしも夏に来た時と冬に来た時の2回ともこの標識の前で写真を撮った。


夏に来た時は中国からの観光客が多かった。中国の婦人会だろうか。ショッキングピンクやラメの入ったシースルーブラックの洋服を身にまとった年配の女性の集団が標識の前に座ってポーズを決めていた。


中国の観光客はパワフルだ。絶えず大きな笑い声をあげながら交代ごうたいに写真を撮りあっていた。この底無しの元気は中華料理のおかげなんだろうか。

そういえば韓国に行った時も、韓国の女性はパワフルだった。
ツアーガイドをしてくれたおばさまは、日本の女の子たちが大人しすぎることを心配していた。

「ワタシ、大人しいすぎるから、ココロのびょうきかと思って心配だよ」

と言われた。そういうものなのか。
とにかく、大陸のパワーには時々圧倒される。

夏のウラジオストクではそうやって中国婦人会のみなさんが楽しそうにウラジオストク駅のホームを見て回っていたが、冬のホームには、友人とわたし以外誰もいなかった。

誰もいない駅のホームをぶらぶらしているとチラチラと雪が降ってきた。

東北出身の友人は、雪が降る少し前に「雪のにおいがする」と言った。
そういうものなのか。

雪がほとんど降らない関東で育ったわたしには雪のにおいは分からなかった。

人は育った土地が違うだけでずいぶん違うものなのだなと思った。
もしも東北で育ったていたら、わたしも今ごろ雪のにおいが分かる大人になっていただろうか。
もしも大陸に生まれていたら、わたしもパワフルな人になっていただろうか。

雪は最初、ホームのアスファルトに小麦粉をはたいたようにほんの少しだけ降り積もった。
次第に地面は白いオーガンジーをかぶせたようにまんべんなく薄白くなり、気がつくと純白の絹をかぶせたようにグレーのアスファルトがほとんど見えなくなった。確実に雪が積もりつつある。

そこに1台の列車が入ってきた。