【サウナ】朝日湯源泉ゆいると経済発展の密な関係

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サウナシュランに選ばれた最強サウナ施設

川崎の人気サウナ 朝日湯源泉ゆいる

サウナ版のミシュランガイドとしてサウナ界で最も権威のある賞、サウナシュラン。毎年11月11日(ととのえの日)に「今行くべき全国のサウナ施設」が発表されます。

その栄誉ある賞に、施設をリニューアルするやいなや選ばれたのが、川崎の朝日湯源泉ゆいるです。創業75年の老舗銭湯だったゆいるが、都市型温浴施設としてリニューアルしたのは2021年2月。こだわりのサウナと水風呂はリニューアルオープンと同時にサウナーの熱狂的な支持を集め、その年のサウナシュラン2021で10位にランクインしました。

ゆいるの歴史を紐解く工業的な地名

ゆいるは、鋼管通という川崎港の近くにあります。この鋼管という武骨で工業的な地名。京浜工業地帯の中心地である川崎の街の歴史が、いかにもひそんでいそうな感じがします。

ゆいるの地名を紐解いてみると、日本の重工業の発展と、現代の人気サウナ施設ゆいるの関係が見えてきました。

日本経済の発展と銭湯の密な関係

渋沢栄一が関与した鋼管製造

製鉄所
鋼管事業には渋沢栄一も関わった

鋼管とは、鋼鉄製の管のこと。ガス管や水道管などインフラ整備に欠かせない資材です。

日本でいちばん最初に誕生した鋼管を製造するための会社は、日本鋼管株式会社(現:JFEスチール株式会社)という会社で、京浜工業地帯に製鉄所があります。

大河ドラマの主人公にもなった渋沢栄一は、近代日本経済の父として日本初の銀行をつくったことで有名ですが、実は、日本鋼管設立の発起人でもありました。

会社が設立された明治から大正にかけては、ガス、水道事業の発展にともない鋼管の需要が増していた時期です。日本の資本主義の基礎を築いた渋沢栄一は、鋼管製造事業の重要性を深く理解していたのでしょう。事業計画に賛同して多方面に協力を要請し、日本鋼管の設立に大きく寄与しました。

ゆいるの所在地 鋼管通の由来

日本鋼管の製鉄所は、ゆいるの最寄駅である浜川崎駅からほど近い人工島の中にあります。ゆいるのある鋼管通という地名は、製鉄所で働く労働者が日本鋼管に通うための通勤路だったことに由来しているのです。

ゆいるが面している道路を海側に向かってしばらく歩くと、JFEスチール(旧:日本鋼管)のビルが見えてきます。

大正時代にはまだ道が整備されておらず、湿地帯だったため、経営者は人力車で通勤していましたが、身分の低い労働者は足場の悪い道を歩いて通ったのだそうです。今ではコンクリートで整備された2車線の道路になっています。

ゆいるを訪れた際は、入店する前に道路をながめながら、当時の通勤の様子に想いを馳せるのも一興です。

ゆいるの最寄駅、浜川崎駅も、元々は京浜工業地帯の工業製品や資材を運搬するための貨物駅として開業しました。

現在は、貨物線の他に鶴見線、南武線が乗り入れていますが、支線のために運行本数は限られています。工業地帯で働く人の通勤時間にはある程度の本数が運行していますが、それ以外の時間帯では1時間に1〜3本程度と、本数が極端に少なくなります。

このことから、ゆいるの事実上の最寄駅は支線の浜川崎駅ではなく、2.5km離れた川崎駅となります。通勤時間帯以外に誤って浜川崎駅を使うと、長時間ホームで待ちぼうけすることになるので注意しましょう。

朝日湯源泉ゆいる 歴史とともに歩んだ軌跡

銭湯と製鉄所が復興にもたらした力

日本鋼管の川崎製鉄所は、1940年に操業したものの、戦時下で攻撃を受けるなどの苦境に立たされ、稼働していた高炉は戦時中に次々と休止に追い込まれてしました。そして、終戦の翌年に操業を再開します。

時を同じくして、同年1946年に 朝日湯(現:朝日湯源泉ゆいる)が、鋼管通に誕生します。

操業を再開して新しい時代へと進みはじめた製鉄所と、銭湯が同時に動き出したのです。

戦争で疲弊したこころとからだを休めるひまもなく復興にあけくれた人々にとって、銭湯がどんな存在であったかは、想像に難くありません。製鉄所でのきびしい労働のあとに銭湯でひと風呂浴びる時間は、何よりも至福のひとときだったことでしょう。

朝日湯源泉ゆいる リニューアル後の魅力

川崎の人気サウナ、朝日湯源泉ゆいるの所在地名から、製鉄業の歴史と、その労働者に欠かせない存在だった銭湯の歴史を振り返ってきました。

現在の朝日湯源泉ゆいるは、2021年にリニューアルをして、こだわりのサウナ、水風呂が人気の施設になっています。サウナ室では定期的にアウフグース※イベントが行われ、今やサウナに欠かせない存在となった熱波※を体験することができます。
※アウフグース:熱い蒸気をタオルであおいで、利用者に熱い風をおくること
※熱波:アウフグースで発生する熱い風のこと

併設するレストランの食事も見逃せません。名物の昭和プリンは、みっちりとした食感がたまらない、かためのプリン。ビターなカラメルソースとの相性がばっちりな大人向けプリンです。コーヒーはセルフサービスでおかわり自由。サウナ後の休憩にもってこいのレストランです。

この週末、日本経済発展の歴史と、最高のサウナを味わいに、ぜひ川崎にお出かけしてみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

サウナ短歌の第一人者。サウナスパ・プロフェッショナル。公衆浴場コラムニスト。お問い合わせはインスタ・TwitterのDM、またはHPの問い合わせフォームからお願いします。

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