【サウナ短歌】甘えたくなるサウナ

ドラえもんに「パパはあまえんぼ」という話がある。のび太のパパ・のび助がタイムマシンで過去に行って、今は亡きおかあさんに甘えるというお話し。子どものようにおかあちゃんの膝の上でえんえんと泣くので、それを見たドラえもんが「大人ってかわいそうだね」とつぶやく。

「自分より大きなものがいないもの。よりかかってあまえたり、しかってくれる人がいないんだもの」というのがドラえもんの言い分。子どもの頃にこの話を見て、当時かなりおどろいた。大人もおかあさんに甘えたいだなんて、考えたこともなかったからだ。

大人になった今でも、「パパはあまえんぼ」を読むと子どもの時と同じようなおどろきがある。大人をやっていると「大人とはかくあるべし」と思いこんで、甘えたい気持ちなんてすっかり忘れているからだ。大人は毎日会社に行くし、家事もするし、おかあちゃんの膝の上では泣かない。多くの大人は、ぶあつく塗りかさねた砂糖衣が大人のカタチに固まってガチガチになっている。

だからわたしは15時の銭湯に行く。銭湯のふだが「ぬ」から「わ」に掛け替えられる。湯が「わ」いたの合図だ。開店直後の銭湯には、地元の高齢者が大勢やってくる。
銭湯に通う常連さんからしたら、わたしはのび助よりもちいさな子どもに見えるのだろう。ローカルルールを教えられたり、湯に浸かる時間が短いとからかわれたりして、子どものように世話をやかれる。

最初こそむずがゆいが、そこは銭湯。カチカチの砂糖衣は溶けて、いつの間にか子どものわたしが顔を出す。おばちゃんに「またね」と言われる頃には、もっと甘やかされたくて泣きたくなる。

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この記事を書いた人

サウナ短歌の第一人者。サウナスパ・プロフェッショナル。公衆浴場コラムニスト。お問い合わせはインスタ・TwitterのDM、またはHPの問い合わせフォームからお願いします。

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