【旅エッセイ】香港 〜あやうい魅力の街 香港

※この記事は2017年8月の旅行を振り返っています。

香港といえばこの道路にせり出した看板だ。
色とりどりの看板が空への視界をさえぎるようにあふれている。

とはいえ、ツアーガイドのトニーさんの話では最近は看板が減ってきているらしい。看板やそれを支えている鉄骨が古くなって落下事故が起きたりしているらしいのだ。
香港らしさが失われてしまって少しさびしいな、なんて考えてしまった。ただの観光客のエゴだ。

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この風景はKEN ISHIIのExtraのミュージックビデオを彷彿とさせる。

Extraはテクノ・ゴッドと呼ばれる日本のテクノ界の第一人者であるKEN ISHIIの代表曲で90年代にテクノ界で爆発的なヒットとなった。
ダンスミュージックに馴染みのない人には分かりづらいかもしれない。いい例えがうまく見つからないけれど、J-POPにおけるサザンオールスターズの「いとしのエリー」みたいなもので、この曲がかかると全員が まってました! と一体になって大合唱してしまうような、世代を超えて愛されている曲だ。
矢沢永吉の「止まらないHa~Ha」みたいなものですとも言いかけたけど、これも一部の人には伝わらないかもしれないからやめた。


念のために久しぶりにExtraのミュージックビデオを見直してみたら、看板通りのシーンはほんの一瞬だけだったし、中国語ではなくて日本語の看板だった。思い込みは恐ろしい。
香港の看板にかこつけてKEN ISHIIのはなしをしようと思っていたのにあてが外れたので、看板のはなし自体をナシにしようかとも思ったけど、香港といえば看板なのでがんばってみる。

ちなみにExtraのミュージックビデオはこちらです。

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香港の街は一歩路地に入ると古い雑居ビルのような建物が並んでいる。
日本の雑居ビルよりももっと古くていかがわしい感じに見えるのは色の違いかもしれない。
日本だとグレーやアイボリーといったモノトーンであるのに比べて、香港の雑居ビルは赤、黄色、緑…とカラフルな看板に彩られている。
モノトーンのものが古びていてもあまり気にならないけど、元がきらびやかなものがホコリや油で汚れて朽ちそうになっていると、余計に時間の流れを感じる。落城した都が数千年放置されたみたいな、栄華を失ったさみしさみたいなものを感じさせるからかもしれない。

ところが、この都の場合は放置されているどころか今でも人が集まって栄えているのだ。
ボロボロのまま放置されているのは、この国の都市計画が極端なせいだろう。海沿いには真新しいガラス張りの高層ビルが立ち並んでいる。香港の強い日差しがビルの外装に照り返されるのでまぶしくて目があけられない。
その一方で、ほんの少し内陸側に足をのばすだけで改修される気配が一切ない年代物の建物がギュウギュウ詰めになって並んでいる。看板の落下事故が問題になっているのなら、建物自体も危ない要素が満載のはずなのだ。

観光としては、そのあやうさが魅力なのだけど。

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この記事を書いた人

サウナ短歌の第一人者。サウナスパ・プロフェッショナル。公衆浴場コラムニスト。お問い合わせはインスタ・TwitterのDM、またはHPの問い合わせフォームからお願いします。

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