【旅エッセイ】裏山で焚き火

朝のひかりを浴びながら下り電車に乗るとウトウトする。
本を1ページ進めたところでまぶたが重たくなって、
タブレットを膝に置き目を閉じた。

電車に乗り合わせているのは、年配の登山客と朝帰りの若者だけ。
なんの気負いもない空気は、
羽毛ぶとんのようにわたしをつつみ眠りにさそう。

 

 

山はおどろくほど騒がしい。

靴底が小石をこする。乾いたどんぐりが割れる。

枯葉はそれぞれが個別の音を奏でる。
まだ落ちたばかりの葉はパリパリと、
さんざん踏みしめられた塵くずのように細かくなった葉は
空気の抜ける音がする。

高度が高くなるにつれて、風の音は怖さを増す。
見上げると杉の木が腰のあたりから大きくしなっている。

道なき道を通り抜けると伸び放題の枝がリュックのナイロンを擦る。

都会の喧騒から逃れたはずが、山の方がずっと騒がしい。

 

ハンモックの不思議。
ロープを木にくくりつけるだけでハンモックが完成する。
ひと巻きしているだけなのに、ズリ落ちない。

ハンモックに座っても、ごろ寝してもロープはズリ落ちない。

初めて山の中でハンモックを張った時は何度も確認してしまった。

「え?これだけ?落ちない?」

ハンモックとして耐えられる用のナイロンテープなのだろうけど、
何度見ても落ちないのが不思議。

ハンモックはExpedというULギアで有名なブランドのものです。
多分これかな?ちょっと違うような気もするけど。
https://exped-jp.com/products/detail/512

 

 

火を目の前にすると人はたくましくなる。
いや、どんなにへなちょこでもたくましく見えちゃう。

ゆるキャン△でリンちゃんが作った
初めてのキャンプ飯「スープパスタ」を焚き火で作った。
髪型もリンちゃんヘア。カラーリングは不良娘。

スープパスタを作るのはとっても簡単。
全ての具材と調味料をジップロックに入れる。
牛乳は500mlのパックをひとつ
カバンにぽいっと放り込んできた。冬なら、まぁ腐らないでしょう。

水を入れたアルミ鍋を焚き火の上にくべて、
沸騰したらジップロックに入ったオールインワン材料をぶち込む。
程よく煮えたら牛乳を入れて完成!

さらに家の冷蔵庫に余っていたバジルとチーズを
トッピングしたら焚き火料理とは思えない手の込んだ味になった。

 

火は命のメタファーだ。

本能的に、この火を消してはいけない衝動にかられる。
目の前で燃える炎に自分の命を重ねてしまう。

落語「死神」やグリム童話「死神の名付け親」に出てくる
命のろうそくのイメージのせいではないと思う。

大昔、火は命そのものであったはずだ。
火で暖をとり、火で獣を追払い、火で調理をして腹を満たした。
きっとその頃の記憶がDNAに刻まれているのだ。

生きるために絶えず木の枝をくべた。
火が消えないように、
わたしの命が尽きてしまわないように。
火が灯っているうちは安泰だ。

もし生きる気力を失った時は焚き火をするといいと思うよ。
安全な場所でね!

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この記事を書いた人

サウナ短歌の第一人者。サウナスパ・プロフェッショナル。公衆浴場コラムニスト。お問い合わせはインスタ・TwitterのDM、またはHPの問い合わせフォームからお願いします。

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