【旅エッセイ】信州しなの町 ~長野県入りしてしまったふたり

※この記事は2019年9月の旅行を振り返っています。

長野駅から小布施を経由して目指したのは野尻湖。ここにサウナ界で注目されているサウナがある。The Sauna。シンプルで真っ向勝負な名前だ。

ゆっくりサウナを楽しむために、併設しているLAMPというドミトリー宿に宿泊した。
ドミトリーというと昔のユースホステルをイメージする人もいるかもしれないが、なかなかオシャレでキレイな作りの宿なので安心して宿泊できる。

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サウナあがりにお風呂でサッと汗を流した。
共同風呂は家庭のお風呂よりひとまわり大きいぐらいのサイズで共同風呂としては小さめだけど、幸い他の宿泊者と時間をズラして入ることができたので、友人と2人で快適に入浴することができた。
新しい木の香りが心地よいキレイなお風呂だった。
水周りがキレイだと居心地が格段によくなる。

サウナと入浴のおかげですっかりお腹が空いていた。たくさん汗をかいたので喉をシュワっと通り抜ける何かもほしくなる。
The Saunaでお世話をしてくれたスタッフの方から、LAMPのゴハンはおいしいよ!と聞いていたので、否応なしに期待がふくらむ。

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まずは地ビールで乾杯!つまみにラムチョップを注文した。サウナのあとはガツっとした肉がよく合う。The Saunaは熱源が薪なのでなおさら獣らしい肉が食べたくなる。

普通、サウナは電気かガスで温める。The Saunaのように薪で温める場合はサウナの中に鉄製のストーブがあって、その中に薪をくべて火をつける。
暖炉のように火がパチパチと燃える様子を目からも耳からも感じることができる貴重なサウナだ。

火は人間の本能をゆり起こす。
キャンプファイヤーや焚き火でもそうだと思うけれども、火のゆらめきを見つめていると原始的な活力がわいてくる。そして、肉が食べたくなる。

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ラムはやわらかく滋味深いあじわいだった。臭みもほとんど感じられない。
そこに流し込む地ビール。もったりとしたホップの甘みがのどを潤しながら流れていく。

食欲に火がついた私たちは追加でピザを頼んだ。

ところがそれが災いしてしまった。
ピザにはくるみが入っていた。実は友人がナッツアレルギーだったのだ。

幸い摂取量が少なかったので大事にならずに済んだ。スタッフの方が親切に近隣の病院を調べてメモを渡してくれた。

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実は長野県入りしたあたりから、私たちは食事に不穏な空気を感じ始めていた。

友人はナッツアレルギー、元・そばアレルギー(今は大丈夫だと言うが真意のほどはあやしい)。そして私はりんごアレルギーだ。長野の名産品をみごとに拒絶するボディーの2人が長野県入りしてしまった。

私たちは食事のたびにメニューをしっかり読みこんでいた。くるみが入っていそうな食べ物はわたしが先に味見をしてから友人にGOサインを出し、りんごか何か分からない果物のデザートは、友人が先に味を確かめた。

そうやって補いあいながら長野を綱渡りしてきたのに、最後の最後で気が抜けてしまった。
わたしがくるみだと気づいた時には友人はすでにうっすらと苦しそうな表情を浮かべていた。

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友人は楽しい雰囲気に水を差してしまったのイヤだと言った。その気持ちは分かる気がする。

気分転換に宿の外に出ると、宿の明かり以外は真っ暗闇が広がっていた。旅ってどうして色々おこるんだろう。

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この記事を書いた人

サウナ短歌の第一人者。サウナスパ・プロフェッショナル。公衆浴場コラムニスト。お問い合わせはインスタ・TwitterのDM、またはHPの問い合わせフォームからお願いします。

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