【サウナ】穂高養生園|森のハーバルサウナ・リトリート

穂高養生園

サウナ短歌
むらさきの祈りが満ちる聖堂にくちびるを差す月ひとしずく

ラベンダーの香りが漂うサウナ

ラベンダーの香りが漂うサウナ

穂高養生園|森のハーバルサウナ・リトリート

サウナ専門の検索サイト「サウナイキタイ」にまたひとつ新しい施設が登録された。
長野県安曇野市にある穂高養生園というリトリート施設だ。北アルプスの麓にサウナ小屋がぽつんと立っている。まるでホビット族の住居のようなサウナだ。山の斜面に張り付くようにして石造りのサウナがあり、小屋の屋根には野草が生い茂っている。遠目に見ると、うっかり見過ごしてしまうほど山の景色に溶け込んでいた。

ハーバルサウナ

森と同化しているサウナ小屋

正直に言うと、このハーバルサウナのことを記事にするのは躊躇(ためら)われた。2泊3日のワークショップに参加しないと入れない※という希少性もあるが、それよりも穂高養生園が心身を回復させるための施設だからだ。
※2021年時点。詳細は穂高養生園の公式HPをご確認ください

サウナだって心身を回復させるための施設だ。だが、穂高養生園にはわたし達が想像できない程に繊細な人も集う。例えば、香料や化学物質に敏感な人が宿泊できるように施設に備え付けてあるシャンプーやボディーソープは自然由来の製品を使用している。一般的な既製品に慣れ親しんだわたしにとっては逆に違和感のある使い心地だったのだが、これでなければ生きていけない人がいるのだろう。

サウナブームのおかげで、良いサウナがあるホテルや旅館はたくさんある。だけど穂高養生園にしか宿泊できない人がいることを頭の片隅に置いておきたい。

ワークショップ「森のハーバルサウナ・リトリート ~サウナと森林浴でととのえる3日間~」は、初日の夜と2日目の昼の2回、森のハーバルサウナに入るプログラムになっていた。参加者は6名。その中で普段からサウナに入っているいわゆるサウナーはわたし1人だった。残りの参加者は半断食やデジタルデトックスなどを目的に集まっており、どちらかというとサウナは苦手だという人もいた。

石造りのサウナ小屋

石の壁と天井はひんやりとしていた

夜になると安曇野の森は完全な暗闇に覆われた。コンビニの明かりもネオンサインもない。月明かりも分厚い雲に隠れてしまっていた。Tシャツと短パンに着替え、懐中電灯で足元を照しながらサウナ小屋に向かうと、薪ストーブの良い香りがただよってきた。鼻先に届く道しるべをたよりにサウナ小屋に入ると、当然小屋の中は真っ暗。換気用の小窓があるものの、外が真っ暗なのだから明かりは一切入ってこない。唯一置かれたテーブルキャンドルが心もとなく小屋の中を照らしていた。

サウナ小屋の中には溶岩石を積んだサウナストーブとラベンダーをひたしたロウリュ用の寸胴があり、スタッフが絶えず薪をくべている。松の木を燻したような甘い煙と自生のラベンダーを煮出した花の香が小屋を満たしていた。ラベンダー水を溶岩にまわしかけると、むらさき色の小さな花蕾のように可憐な蒸気が頭上から降り注いで、参加者から自然と深いため息がもれた。マスクを外した後も固く結んでいた口元が解けた瞬間だ。それはあまりにも久しぶりの音で、耳介が懐かしさに咽び泣いた。

水分補給のための休憩をはさみながら、2回、3回とサウナに入るたびに小屋の中の温度が上昇していく。最初は汗をかかない程度の穏やかなあたたかさだったのが、2回目にはこめかみから汗が流れ、3回目は全身びっしょりになるほどの汗が吹き出した。ところがいつものようにべったりとまとわりつく不快な感じがしない。肌の表面をさらさらと伝い覆う。

サウナストーブ

薪の甘い香りが漂う

「蒸気浴」

江戸時代、風呂といえばお湯から立ち昇る蒸気をまとう蒸気浴のことを指した。水や燃料が貴重だった江戸では湯を張った浴槽に浸かることは贅沢でまれなことだった。

穂高養生園のハーバルサウナは、蒸気浴と言う呼び方がしっくりくる。ドライサウナとは違うし、ミストサウナとも違っていた。温度は40〜50度と低くミストサウナに似ているが蒸気の量が多く、角のない丸みをおびた肌あたりがして、蒸気を浴びるというのはこういうことかと初めて思った。

石造りの黒い天井を仰ぐとまつ毛の上に水滴が乗っているのが見えた。キャンドルに照らされてきらきらと輝く様は、見えるはずのない月明かりを思い起こさせた。

森の家の生活|30年以上の歴史を誇るリトリート施設の心遣い

珍しいサウナに入れるという好奇心だけで森のハーバルサウナ・リトリートに申し込んだので、予約をしてから改めてHPの説明を読んだ時に、実は、少し後悔をした。食事は1日2回、完全な玄米菜食なので肉や魚は一切食べられない。施設内での飲酒は禁止だし、ワークショップで宿泊する「森の家」はWi-Fiがない。もちろんスマホの電波も届かない。

サウナの後にはビールを飲もうと思っていたし、普段できないHPの更新やwebで調べ物をしようと思っていたのにどれも叶わない。自分都合のとんだ責任転嫁なのだけど、せっかくの休暇がもったいないような気持ちになった。

ところがマクロビのごはんは想像していた以上に美味しかった。凍み豆腐で作った油淋鶏風のメイン料理は味、噛みごたえともに完全に油淋鶏していた。黒もちとうもろこしと松の実を混ぜた玄米ごはんのコクのある味も忘れがたい。残りの人生は毎日このごはんが良いと思うほどの美味しさだ。滞在中はお肉が食べられない不満をすっかり忘れてしまっていた。

マクロビ食

自然の中でいただく滋養のある食事

スマホが見られないことは初日だけストレスだったが、2日目からは諦めて気の向くままに森をさんぽしたり、本を読んだりして過ごした。とにかく場所だけはたくさんあった。森の中で栗ひろいをしたり、くろもじの枝を採ってかじったり、自然は無限の遊び場だ。安曇野は名水地でもあるので、底まで透き通った川をただ眺めているだけでも楽しい。

気がつくと、慢性的な胃炎と唇の荒れがウソのように消えていた。

数年前からリトリートという言葉がよく聞かれるようになった。自然の中にあってヨガなどの適度な運動ができる宿泊施設のことを、ざっくりとリトリート施設と呼んでいるようだ。いくつか流行りのリトリート施設のHPを見てみたが、穂高養生園はその中でも特別に感じる。食事だけに限らず、宿泊施設の建材や、アメニティまで、日々の喧騒に疲れてやってきたゲストが元気を取り戻せるように徹底して心を砕いている。その徹底ぶりがすごい。

ハーバルサウナ・リトリートの参加者の中に「ありとあらゆるところに気遣いが感じられて、とても大切にされていると思った」と感想を述べた方がいた。

リトリート施設の先駆者として30年以上人々を癒し続けた施設が成せる心遣いがあった。

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