サウナ短歌
フロントに告ぐこちら六階浴室前半裸の子らがうろついてます
天然温泉 泉天空の湯 有明ガーデン|都市計画が完成するとき

有明のある臨海エリアは、都市計画ありきで作られた街だ。
東京湾の埋立地にあり、インフラや商業施設、住居が理論整然と整備されている。有明の発展は、物流を主軸にした港湾計画から始まり、徐々に商業施設や住居などの都市計画へと移っていった。
戦前には市庁舎をこの臨海エリアに移転する計画があった程、長年にわたって注目されてきたエリアだ。
中でも有明ガーデンは、地域最大級の複合施設として2020年に開業した再開発の要。
その中にあるスパが泉天空の湯だ。

コンセプトは
遊べる、癒される。感動のすべて「SPACITYスパシティ」
有明ガーデンの中には、映画館やショッピングモールがあり、さらにホテルが隣接している。泉天空の湯を中心に、ありとあらゆるレジャーを楽しむことができる。
館内は明るく清潔で、ところどころにグリーンがあしらわれている。木のぬくもりを感じさせるインテリアも心地良く、都会にいながら自然の中にいるようなやわらかな雰囲気になっている。
都市計画にスパのディティールが盛り込まれていたわけではないと思うが、泉天空の湯は計画的な理想郷のようなつくりだ。
計画的な開発には計画的であることの良さがある。
例えば、臨海エリアの開発計画では、安全で快適な暮らしのための全てがもれなく盛り込まれている。
初期計画段階では、関東大震災での陸上交通のダメージを教訓にして、港が整備された。後の都市計画では、国際化、情報化社会に対応する世界都市の実現と、豊かな都市生活を両立させるため、オフィスや住居、レジャー施設が次々に誕生した。
途中バブル崩壊など政治経済の影響を受けたため、順調に開発が進んだわけではないが、それでも物流インフラの整備、豊かな都市生活のための設備などが効率よく配置されてきた。
無計画に作られたつぎはぎの街では、このような整然とした都市づくりはできない。

泉天空の湯も同じように、リラクゼーションのための全てが盛り込まれている。心やすまるインテリア、体をほぐすエステ、お腹を満たすダイニングキッチン。そして、天然温泉とサウナ。
ところが、わたしが一番満たされたのはそのどれでもなかった。わたしが一番リラックスした瞬間。それは浴室エリアのある6階にいた三兄弟を目撃した時だった。
下は4歳から上は7歳くらいだろうか。男女共有の休憩スペースに出ると子ども達がたむろしていた。周りに保護者の姿はない。
一番下の子どもは、なぜか上半身裸だ。真ん中と下の子は好き勝手に体をくねらせながら遊んでいる。一番年上の子は理性が働いていて、下の階の受付エリアに降りてはいけないと下の子たちを嗜めていた。
臨海エリアのイメージとは真逆の微笑ましい光景だった。次に都市計画をアップデートする時には、計画書に半裸の子どもを折り込むべきだ。
サウナニューウェイブ|スチームサウナの可能性
泉天空の湯の女風呂にはスチーム塩サウナしか無い。
サウナブームの中でサウナーが求めているのはドライサウナだ。スチームサウナとドライサウナは真反対の関係にある。スチームサウナは低温・高湿度、ドライサウナは高温・低湿度だ。
ドライサウナでは80〜100度で体を温めた後、15度程度の水風呂に入り一気に冷やす。この極端な温度差の刺激で血のめぐりが良くなり、さらに自律神経やホルモンの働きによってととのう。
サウナーが求めるととのうとは、エクストリームな状況がもたらす特殊な状態だ。サウナーはこの刺激的な体験を求めている。
なので、同じサウナという名前でありながらスチームサウナはブームの中では求められていない。女性サウナーの中には、スチームサウナしか無いのであれば泉天空の湯には行かない、と考える方もいるのではないだろうか。

しかし侮ってはいけない。スチームサウナには充分な魅力がある。さらに、エクストリームサウナが飽和状態の今、一番成長の可能性を秘めているのはスチームサウナだ。
スチームサウナは、肌のうるおい効果が高い。一般家庭用の浴室ミストサウナに一ヶ月連続して入ると、肌の水分量が24%増加したという実験結果*がある。
*出展:2005年大阪ガスエネルギー技術研究所
美肌効果は男女関係なくささるアピールポイントだ。資生堂など大手化粧品会社からメンズスキンケアアイテムが発売されている今、美肌はジェンダーレスな関心ごとになった。
ドライサウナとは異なり、血行促進と保湿が両立できるスチームサウナは、美肌づくりの最適解と言える。
また、温度が40〜50度とおだやかで体に負担がかかりにくいため、ドライサウナよりも幅広い層が楽しめる。
もちろん、昨今のサウナブームから離れた一般的なリラクゼーションとしてであれば、スチームサウナは今までも一定の需要があった。特に女性の中にはドライサウナに入ったことはないがスチームサウナには入る、という方も多いだろう。
ところが、スチームサウナを目玉として推している施設はほとんど無い。
Googleで「サウナ おすすめ」と検索すると約2800万件ヒットする。対して「ミストサウナ おすすめ」と検索すると20分の1程度になる。しかもそのほとんどがミストサウナではなくドライサウナを勧めるものであったり、自宅に設置する浴室ミストサウナの記事だったりする。

泉天空の湯のスチーム塩サウナは、検索ワード「ミストサウナ おすすめ」にヒットして欲しいスチームサウナだ。
温度は50度。スチームサウナとしては高めの温度設定で、しっかりと温まる。塩サウナとしても50度は良い温度だ。体にすり込んだ塩が溶けやすく、肌にしっかりと浸透するように感じる。
雰囲気も良い。アイボリーを基調としたやさしい色味の内装。鳥のさえずりが聞こえるBGM。サウナ室内には、もうもうと蒸気が立ちこめて、自分や他人の裸にうっすらとベールをかける。これによって程よくプライバシーが守られる。
さらに、スチームサウナ特有の蒸気の多さは、神秘的とも言えるような独特の雰囲気を作りあげている。
今のスチームサウナに不足しているものは、概念の浸透だろう。そもそもスチームサウナとは何なのか? どんな体験ができるのか? あまりにも漠然とした理解しかされていない。
「サウナ=ととのう」に匹敵するような、スチームサウナの基本的な概念が磨かれていくことを望む。
スチームサウナの進化のカギとなるのは、すでに述べた、蒸気がもうもうと立ちこめる独特のビジュアルだ。
幻想的な見た目は、写真映えするだけでなく、見せ方によって様々な体験を引き出す。
例えば湖や森林に霧がかったような見せ方をすれば、マイナスイオンを浴びているようなリラックス感を得るだろう。
また、教会や寺院のような空間に蒸気が漂えば、煙を用いた宗教儀式の様子が思い起こされて、浄化や瞑想といったイメージにつながる。
施設毎に趣向を凝らしたスチームサウナが出来れば、スチームサウナ巡りといった新しい流行が生まれるだろう。

コンセプチュアル・スチームサウナの誕生が今から待ち遠しい。
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