【サウナ】朝日湯源泉ゆいる|黄金色にかがやく湯船

サウナ短歌
午下(ごか)の湯は金に染まりて春を待つ すやり霞のたなびきたりて

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朝日湯源泉ゆいる|黄金色にかがやく湯船

すやり霞

朝日湯源泉ゆいるは、サウナ版のミシュランSAUNACHELIN 2021に選ばれた人気の施設だ。土日にはサウナ待ちの行列ができる。そこで、一番空いていそうな平日の昼下がりに朝日湯源泉ゆいるを訪れた。

個人的な話しになるが、先日、会社員を卒業して晴れて自由人になった。そんな気ままな身分の人間が、わざわざ会社員とドン被りの時間帯にサウナに行くものではない。プー太郎なりに、社会と調和しようと心がけている。

思ったとおり、平日の昼下がりは空いていた。それでも、館内には男女合わせて10名程のお客さんがいたことから、朝日湯源泉ゆいるの人気ぶりが分かる。そもそも朝日湯源泉ゆいるはアクセスが不便な場所にある。周囲には商業施設がなく、朝日湯源泉ゆいるに入る以外の目的でここを訪れる人はいない。そんな施設に、平日、ある程度のお客さんが来るのは、間違いなく朝日湯源泉ゆいるが人気施設だからだ。

ゆいるがある「鋼管通り」周りには何もない

浴室は、黄金色に輝いていた。内装が成金趣味だったわけではない。お湯が黄金色だったのだ。朝日湯源泉という名前から分かるとおり、朝日湯源泉ゆいるでは黄色味をおびた天然温泉を使用している。よく効きそうな黄金色の温泉が、窓から差し込む午後の日差しを受けて、より一層まぶしく輝いていた。外はダウンコートを着こむほど寒いのに、この場にだけ春が来たかのようだった。

黄金色のお湯からは、白い湯気が立ちのぼり、外気浴スペースから吹き込んでくる風にたなびいていた。湯船一面を覆う湯気は、お湯の色と相まってすやり霞のようだ。すやり霞は、絵巻物などに描かれる金色の雲のようなもやのことを指す。すやり霞の下には風景や人の営みが描かれ、斜め俯瞰の構図になっていることが多い。絵巻物は、まるで天から下界を見下ろす神様のような視点で描かれる。

湯船に浸かりながら、目の前に広がる絵巻物のような光景を眺めた。神様の気分だ。春を思わせるあたたかさの中で、崇高な気分を味わった。

リニューアルオープン|その他の公衆浴場になった理由は?

朝日湯源泉ゆいるは、現代風のおしゃれな外観からは想像ができないが、元々は老舗の銭湯だった。創業は昭和21年。終戦直後から川崎市民を温め続けてきた。

生まれ変わった「ゆいる」

そんな歴史のある銭湯がリニューアルオープンしたのは、2021年の3月。大胆にも一度銭湯を閉店し、約4年もの年月をかけて、源泉の掘削、建て替えを行った。リニューアルのタイミングで公衆浴場の区分を、一般公衆浴場からその他の公衆浴場へ変更している。公衆浴場法で、浴場の区分は2つに別れている。一つは、一般公衆浴場。いわゆる銭湯のことで、リニューアル前の朝日湯源泉ゆいるは町のお風呂屋さんだった。もう一つの区分はその他の公衆浴場。こちらはスーパー銭湯などのレジャー温浴施設などが該当する。

朝日湯源泉ゆいるその他の公衆浴場へ鞍替えした理由は、顧客満足度の高いこだわりを実現するためだろう。リニューアル前の区分だった一般公衆浴場は、物価統制令によって入浴料が統制されている。令和3年時点の川崎市の入浴料は大人490円だ。法令で定められているため、川崎市内のどの銭湯でも同じ料金設定になっている。

その他の公衆浴場になった朝日湯源泉ゆいるの入浴料は、平日3時間コースの大人料金が1,540円。銭湯の料金設定より約3倍も高い。価格を自由に設定できるのが、その他の公衆浴場の最大の利点だ。それだけ聞くと、売上アップのための変更だと思われかねないが、区分を変更した理由は、ただ単に売上を伸ばしたかっただけではない。以前よりも高い入浴料という資源を元に、お客さんが喜ぶサービスを提供すること。それこそが、朝日湯源泉ゆいるがやりたかったことだ。

この価格を、高いと思うか安いと思うかは、人それぞれだろう。だが、朝日湯源泉ゆいるのこだわりを考えれば当然の値段だ。従来の統制された料金では、これほどのサービスを提供することは不可能だったはず。大胆な改革に踏み切ることで、老舗の看板を守る。こんなやり方もあるのかと感心した。

朝日湯源泉ゆいるのこだわりを一番に感じるのは、冒頭で紹介した天然温泉だ。塩分が豊富で、熱の湯と呼ばれるほど保温効果が高い。浴槽のお湯で顔を洗うと、口の端についたお湯からしっかりとした塩味を感じた。地下1,200mの深さから湧出した成分の濃い温泉が、体をしっかりと温めてくれる。一般的に温泉の掘削は億単位のお金がかかると言われている。それだけに、朝日湯源泉ゆいるリニューアルの本気度が伝わってくる。

そして、関東一の深さを誇る水風呂。男風呂は150cm、女風呂では135cmの深さがある。小柄な人では足がつかないほど深い。さらに、水質にもこだわり、ミネラル豊富な地下水を使用している。水質の良さを全身で感じることができる贅沢な水風呂だ。サウナの後に、深い水風呂に飛び込み、水の浮力に身をまかせている場面を想像してみてほしい。気分はまるでマーメイドだ。

もちろんサウナにもこだわりが詰まっている。室内は清々しい木の香りがして清潔だ。女性用で102度、男性用で105度と、高温のサウナが楽しめるのもうれしいポイント。初心者には熱すぎると感じるかもしれないが、ほどよく湿度があるおかげで息苦しさは感じない。

また、サウナ室のマット一つとっても、徹底した顧客満足へのこだわりが感じられる。ベンチと床面にはそれぞれ異なるマットが敷かれていた。ベンチには、パイルのふんわり感が気持ち良いアイボリーのマット。お尻にやさしい座り心地で、長時間座っていられる。床面には、ボーダーの織り模様がアクセントになっている綿の厚手マットが敷かれていた。ベタつかず、いつ足を踏み入れてもさらりとして清潔感がある。

さらに、薄手のタオルが個人用マットとしてサウナ室内にたっぷりと用意されていた。ビート板タイプのサウナマットは、手軽に洗えて便利だが、人によっては衛生面が気になるだろう。その点、薄手のタオルであれば、いつでも洗い立てのきれいなマットを使える。洗濯の手間やコストを考えると、施設の負担は増えるが、その分お客さんが快適にサウナを楽しめる。こんなところにも朝日湯源泉ゆいるのこだわりを感じることができる。

「ゆいる懐かしの昭和のプリン」むっちり硬めでおいしい

その他、魅力的なメニューが並ぶレストラン、3,000冊のコミックが読み放題の休憩スペースなど、施設の全てに朝日湯源泉ゆいるのこだわりが詰まっている。

これでもまだ、平日3時間コースの大人料金1,540円を高いと感じるだろうか?

そもそも、その他の公衆浴場であるスーパー銭湯の平均的な価格設定は、約2,000〜2,900円だ。それに比べると朝日湯源泉ゆいるの料金設定は控えめだ。リニューアル前より入浴料が高くなったが、あくまでも、お客さんが喜ぶサービスを提供することを目的にしているのが分かる。

朝日湯源泉ゆいるの詳細はこちらからチェック!

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この記事を書いた人

サウナ短歌の第一人者。サウナスパ・プロフェッショナル。公衆浴場コラムニスト。お問い合わせはインスタ・TwitterのDM、またはHPの問い合わせフォームからお願いします。

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